ドラマ「銀二貫」を見ていて、
胸がじんとする場面がありました。
舞台は、商人の町・大坂天満。
父を亡くした少年・松吉が、
寒天問屋「井川屋」の主人
和助に命を救われ、
武士の子から商人の丁稚として
生きていく物語です。
私が心を動かされたのは、
第2回「商人の誇り」の話でした。
井川屋は、寒天を扱う問屋。
その井川屋に、
老舗の高級料亭「浮舟」が
得意先になるという話が持ち上がります。
けれどその後、
妙な噂が立ちます。
井川屋が、浮舟にだけ
高級な伊豆産の寒天を卸し、
ほかの店には安い丹後産を
卸しているらしい。
そんな噂です。
けれど、井川屋は
伊豆産を扱っていません。
井川屋が扱っているのは、
丹後産。
それは、伊豆産を
扱えないからではありません。
自分たちが見極め、
これがよいと信じている寒天だからです。
将軍のお墨付きであろうが、
世間で高級とされていようが、
井川屋は井川屋として、
丹後産に誇りを持っている。
その姿に、私はとても心を打たれました。
有名なものに寄せたくなるとき
小さな教室を始めようとすると、
どうしても不安になります。
私には、まだ足りないのではないか。
あの資格もこの資格も
持っていなければいけないのではないか。
もっとわかりやすい実績がなければ、
人に教えてはいけないのではないか。
そんなふうに、
自分の中にあるものより、
外側にある「わかりやすい価値」に
寄りかかりたくなることがあります。
流行っているものを取り入れた方が、
伝わりやすいのではないか。
そう思うこともあるかもしれません。
もちろん、
資格や肩書き、わかりやすい言葉は
信頼の入口になります。
けれど、それだけに寄りかかってしまうと、
自分の教室が何を大切にしているのかが
見えにくくなることもあります。
井川屋は、
伊豆産(将軍家のお墨付き)という
わかりやすい権威に
寄りかかりませんでした。
自分たちの目と鼻、口で
見極めた丹後産を、
自分たちの暖簾をかけて扱っていた。
そこに、商人としての誇りがありました。
小さな教室の暖簾とは
小さな教室にも、
暖簾のようなものがあります。
それは、大きな看板では
ないかもしれません。
有名な資格名でも、
豪華なスタジオでも、
たくさんの実績でもないかもしれません。
でも、
どんな人に来てほしいのか。
どんな時間を届けたいのか。
何を大切にして教えているのか。
どこまで誠実に向き合うのか。
そういうものが、
少しずつ教室の信用になっていきます。
はじめは、
目に見えにくいものです。
でも、受講生さんは感じています。
この先生は、何を大切にしている人なのか。
この教室は、どんな空気を持っているのか。
ここで学ぶと、どんな自分に近づけるのか。
その積み重ねが、
その教室らしさになっていくのだと思います。
相手によって変えないという信用
浮舟の偽装によって、
井川屋は疑われます。
「あの店は、相手によって
卸す品物を変えているのではないか」
それは、井川屋にとって
とても大きなことでした。
なぜなら、
品物の問題だけではなく、
商いの姿勢を疑われたからです。
小さな教室も同じです。
受講生さんが少ないとき。
申し込みがなかなか入らないとき。
周りの人がうまくいっているように見えるとき。
つい、誰かのやり方に寄せたくなります。
もっと派手に見せよう。
もっとすごそうに見せよう。
もっと売れているように見せよう。
そんな気持ちになることもあります。
でも、そこで大切なのは、
自分の教室の筋を見失わないこと。
できることを、できると言う。
まだ整っていないことは、
これから育てていくと言う。
扱っているものを、
必要以上によく見せない。
自分が本当に届けたいものを、
自分の言葉で伝える。
その正直さが、
小さな教室の信用を育てていきます。
自分が信じるものを、正直に届ける
井川屋は、伊豆産ではなく丹後産を扱う店でした。
でもそれは、
劣るものを扱っているということではありません。
自分たちが見極め、
自信を持って扱っているものを
正直に届けるということ。
そこに、井川屋の誇りがありました。
小さな教室を始めるときも、
同じなのだと思います。
誰かのようになることではなく、
自分が何を見てきたのか。
何を大切にしてきたのか。
どんな人の役に立ちたいのか。
そこに立ち戻ること。
小さな教室は、
大きく見せることで育つのではなく、
誠実に積み重ねることで育っていく。
ドラマの寒天問屋の物語を見ながら、
そんなことを感じました。
小さな教室にも、
守りたい暖簾があります。
それは、
自分が信じるものを、
正直に届けていくという
姿勢なのだと思います。
自分の教室を始めるとき、
最初に必要なのは、
特別な資格や大きな実績だけではありません。
自分が何を大切にしてきたのか。
どんな人の役に立ちたいのか。
どんな時間を届けたいのか。
そこを見つめることから、
小さな教室の暖簾は育っていきます。
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