「それは私の仕事ではありません」の前に考えたいこと

フェールマヴィ


「それは私の仕事ではありません」の前に考えたいこと

小さな教室で本当に届けているもの

朝ドラの一場面に、
教室づくりのヒントを見た

 

NHKの朝ドラ『風薫る』を見ていて、
心に残った場面がありました。

患者さんが、看護婦の訓練生に
「手紙を郵便局へ届けてほしい」
と頼む場面です。

それに対して訓練生は、
「それは看護婦の仕事ではありません」
というように断ります。

たしかに、手紙を郵便局へ届けることは、
看護の技術ではありません。
医療行為でもありません。

看護婦の仕事として
決められた範囲から見れば、

その判断は
間違っていないのかもしれません。

けれども、その場面を見ながら、
私は少し立ち止まってしまいました。

患者さんは、本当に
「郵便局へ行ってほしい」
とだけ思っていたのでしょうか。

もしかしたら、その手紙には、
誰かに伝えたい気持ちが込められていたのかもしれません。
不安、心残り、感謝、謝罪、祈り。

身体の痛みとは別のところにある、
心の重さを少しでも
軽くしたかったのかもしれません。

「仕事の範囲」を守ることは大切

この場面を、小さな教室に
置き換えて考えてみました。

アロマ教室、ハーブ教室、
天然素材の石けん教室。

小さな教室を開くと、
参加者さんから思いがけない相談や
お願いを受けることがあります。

講師として、答えられることもあれば、
答えてはいけないこともあります。

特に健康や体調に関わることは、
安易に踏み込めません。

だからこそ、
「それは私の専門外です」
「医療のことは医師や薬剤師に相談してください」
と線を引くことは、とても大切です。

小さな教室を長く続けるためには、
相手の要望に応えたいという
気持ちだけではなく、境界線も必要です。


何でも引き受けてしまうと、
講師自身が疲れてしまいます。

また、何より生徒さんに
誤解を与えてしまうこともあります。

でも、相手の本当の願いを見ることも大切

ただ、その一方で、私は思います。

「それは私の仕事ではありません」
と言う前に、

その人が本当は何を求めているのかを、
少しだけ見つめることも
大切なのではないかと。

教室にいらっしゃる方は、
単に知識や技術だけを
求めているわけではないのだと

20年教室をやり続けて、
そう思っています。

アロマの香りにほっとしたい。
暮らしを整えるきっかけがほしい。
自分の手で石けんを作る時間を楽しみたい。
毎日に少しだけ、自然の手ざわりを取り戻したい。
誰かと穏やかに話せる場所がほしい。

表向きは「作り方を学びたい」
と言っていても、

その奥には、もっとやわらかな
願いがあることがあります。

小さな教室は、知識や技術だけを
渡す場所ではない

小さな教室の「仕事」として考えると
知識や技術を教えることです。

精油の扱い方。
ハーブの選び方。
石けん作りの手順。
安全な使い方。
材料の意味。
暮らしへの取り入れ方。

でも、それだけではないのだと思います。

教室に来た人が、帰るときに
少し表情がやわらいでいる。

「家でもやってみます」と言ってくれる。
「来てよかった」と感じてくれる。

そんな時間をつくることも、
小さな教室の大切な役割です。

もちろん、講師が何でも
背負う必要はないです。

悩み相談の場になりすぎても
いけないですし、

医療や治療の代わりになることも
できません。

それでも、目の前の人が
何を受け取りたくて
ここに来ているのか。

そこに気づこうとする姿勢は、
教室の空気を変えていきます。

「断る」と「見捨てる」は違う

 

大切なのは、何でも
引き受けることではなく・・・

できないことは、できないと伝える。
専門外のことは、専門家につなぐ。
安全に関わることは、あいまいにしない。

それは、生徒さんを守るためにも、
教室を守るためにも必要です。

けれども、断るときにも言い方があります。

「それはできません」で終わるのではなく、
「私の立場では判断できませんが、
こういうところに相談してみてくださいね」
「教室ではここまでお伝えできます」
「安全に楽しむために、
この範囲で一緒に考えましょう」

そう伝えるだけで、
お相手は拒絶されたとは
感じにくくなります。

線を引きながら、心は閉じない。
このバランスが、小さな教室には
とても大切なのだと思います。

難しいかもしれないけれど、
こういう心持ちでいたら
大丈夫です!

教室で本当に届けているもの

朝ドラの一場面を見ながら、
改めて考えたこと・・・

安心して質問できる空気。
自分の暮らしを大切にしたくなる気持ち。
植物や自然素材に触れるよろこび。
日常の中に、
小さな手仕事を持ち帰るきっかけ。

それらもまた、
教室で受け取ってもらえる大切なものです。

「それは私の仕事ではありません」
そう言わなければならない場面は、
きっとあります。

でも、その前に一度だけ
考えてみたいのです。

この人は、何を不安に思っているのだろう。
何を知りたくて、ここに来てくれたのだろう。
この教室で、どんな気持ちを
持ち帰りたいのだろう。

小さな教室は、ただ何かを教える場所ではなく、
人の暮らしにそっと寄り添う場所にもなれる。

そんなことを、朝ドラの
一場面から受け取りました。

 

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